人工知能を用いた数値解析
従来から、株価や為替レート等の時系列データを予測するための研究が行われています。そこでは、時系列データからアトラクタを高次元空間で再構成し、時系列データを記述する数理モデルの特性を抽出して、その数理モデル化が行われました。さまざまな要因は考察されているものの、満足な予測精度が得られている訳ではありません。一方、人工知能の発展が目覚ましく、ディープラーニング技術を利用して、時系列データを予測することに応用することが考えられます。我々は、ターケンスの埋め込みの方法を利用して、時系列の予測を行う人工知能システムの構築を目指しています。為替時系列データから3次元の相空間に再構成したアトラクタに対してボクセル化処理を行い、3DCNN用いることによって、時間微分の符号を予測することなどを試みています。
3次元畳み込みニューラルネットワークを用いた運動機能検査の簡易化
ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)の評価方法の一つに立ち上がりテストというものがある。立ち上がりテストでは、何度も繰り返し立ち上がりを行うため被験者への負担が大きいことが問題として挙げられる。そこで、1回の立ち上がりテストの結果から、ロコモ度の推定を行うことが求められる。本研究では、複数の関節の位置(縦、横、奥行き)を、3次元畳み込みニューラルネットワークに入力し、ロコモ度の推定を簡易化することを目的とする。
身体運動の多面的計測による熟練度の定量化
身体運動と脳には密接な関係があり、相互に強く作用している。身体運動の研究は未知なる部分の多い脳の解明の重要なアプローチ方法である。本研究では、剣道の熟練度に焦点を当て、身体運動の解析と共に、身体運動が脳に与える影響や精神的変化と脳の関係について研究を行っている。モーションキャプチャや表面筋電図、脳血流分布などを用いて多面的計測を行うことで、剣道の熟練度を定量化し、身体運動と精神状態の関係や内面的な変化について多角的評価を行う。
Binary disk系における応力ネットワークの解析
コンピュータの急速な進歩に伴い、有限要素法や境界要素法などの数値解析を用いて構造物の応用分布を調べることは容易となった。しかし、粉粒体での応力伝播などをコンピュータによって調べることは、不連続点が非常に多く存在するため容易ではない。本研究では、光弾性実験装置を用いることで、ランダムに充填した粉粒体系での応力分布や不連続点を含む応力ネットワークの解析を行っている。
立体映像曝露が生体に及ぼす影響
立体映像はその視聴画像や視聴条件などにより、頭痛や嘔吐、眼疲労などの不快症状を引き起こすことが報告されている。この原因については、いくつかの諸説が述べられているだけであり、本質的な改善に至っていない。そこで、映像酔いを引き起こす因子について生理指標を用いて特定し、評価を行うことが求められている。本研究では、生体が自律的に発する生体信号を解析することで、立体映像の視聴が生体に及ぼす影響について定量的な評価手法の検討を行う。
時系列解析による長期為替レートの特徴抽出
経済の市場予測を行うために、時系列データが利用される。為替レートは、周期性を持つ時系列データでない一方で、無規則な変動を示さない。そのため、為替レートは従来の理論的枠組みの中ではとらえきれない複雑さを有する。本研究では、種々の為替レートを対象とし、それらを定データ長に分割して解析を行う。解析には並進誤差やハースト指数などの各種解析を組み合わせることで、為替レートにおける決定論性や持続性について議論を行い、長期為替レートを生成する数理モデルの特徴抽出を目的とする。
表面筋電図を用いた咀嚼・嚥下動作解析
短期記憶の機能を有する前頭前野における脳血流量の増大は、認知症の抑制に効果が期待される。また、先行研究では咀嚼運動による局所脳血流量の増大についても同様に言及されている。本研究では、認知症の改善に向けた基礎的研究として、咀嚼・嚥下運動と脳血流量について調査を行っている。咀嚼と嚥下防止を含めたシステムを開発しており、咀嚼計数システムや、フィッツヒュー・南雲方程式系による表面筋電図の数値解析を行うことで、咀嚼リズムからその局在部位を特定する新たなアプローチを目指している。
重心動揺を用いた立位制御系の伝達関数解析
体平衡機能を解明することは大脳基底核障害やパーキンソン病などの平衡障害をともなう症状を診断するためには不可欠である。体平衡機能検査の一つである重心動揺検査は体平衡機能の総合的な把握に有用である。本研究では重心動揺検査を用いて、アルコール摂取や立体映像視聴、睡眠遮断時などの実験を行っており、記録された動揺図から外周面積や総軌跡長などの各解析指標を算出している。また、時間平均のポテンシャルから個人レベルでの数理モデル化を行うことで、立位制御系の解明にアプローチを行っている。
曽田香料株式会社との共同研究
嗅覚刺激が自律神経活性を変化させることに着目し、胃電図が香料製品の客観的評価技術として活用可能か否かを検討している。具体的には、香料製品を被験者に嗅がせた状態での胃電図計測結果を周波数解析および複雑系解析し、その香気特性に対して固有の自立神経特性を呈するのかを調べている。続いて被験者に官能評価を実施し、主観的な香気強度と胃電図解析結果の間に相関がみられるかを検証する。